
ダラス出張を経て改めて考える「おまかせ寿司」のリアル:NY vs ダラス 比較レポート(2025年9月)
つい先日、初めてダラスに出張する機会がありました。これまでニューヨークを拠点に寿司業界を見てきた私にとって、ダラスという街は、正直あまり寿司と縁のある場所だとは思っていませんでした。しかし、現地を歩き、いくつもの寿司レストランを訪ね、シェフやオーナーの方とお話ししていく中で、そのイメージは一変しました。今、ダラスには寿司というジャンルにおける新しい可能性が広がっています。
本記事では、ニューヨークとダラス、2つの都市の寿司市場を比較しながら、過去1年の動向や、店舗スタイル、採用事情、家賃、そしてこれからの戦略まで掘り下げてお伝えします。今後、アメリカで寿司業態を展開しようと考えている経営者、あるいは転職を検討しているシェフの皆様にとって、判断の一助となれば幸いです。
ニューヨークではここ1年で、「おまかせ=高級」という固定観念が崩れつつあります。これまで300〜400ドルが主流だったところから、現在は70〜100ドル未満の「ライトおまかせ」へのシフトが明確に見られます。
たとえば、Sushi OkuやUmeなどでは80ドル前後で12貫前後を提供するコースが人気を集めており、49ドル・59ドルといった価格帯の「スピードおまかせ」や、立ち食い形式のコンセプト店も登場。こうした動きは、高級店に飽きたローカル層や、ミッド層の観光客を取り込む上で極めて効果的です。
一方、ダラスではTatsuやShoyoなど、まだ180〜250ドルのクラシカルな高級おまかせが市場の中心です。しかし、2024年〜2025年にかけてDozoやKinzoなどの中価格帯店舗が増加しており、今後はニューヨーク型の「短時間・定額」モデルが波及することも予想されます。
📌 参考: The Infatuation “Best NYC Sushi Under $100” (2025)
この1年で、ニューヨークでは新規開業の勢いが落ち着いた一方、既存店の撤退・業態転換が相次いでいます。非公式ながら、2024年9月〜2025年9月の間に、少なくとも15店舗以上の寿司関連店舗が閉店しているとされ、今や「寿司飽和時代」とも言える状況に入っています。
一方、ダラスではこの1年で10店舗以上の新規寿司店が開業し、Google Mapでの“sushi omakase Dallas”の検索件数も前年比180%に増加。ローカルメディアも毎月のように新規店舗を取り上げており、今まさに“寿司の波”が始まったフェーズにあることは間違いありません。
📌 参考: Eater Dallas “2025 Sushi Restaurant Openings”
立地コストの差は、事業モデルを大きく左右します。
たとえば、マンハッタンで20〜25坪の寿司カウンターを開業する場合、年間家賃は約20万〜30万ドルが一般的です。一方で、ダラスの主要エリア(Uptown, Deep Ellumなど)では同規模の物件が10万〜15万ドルで見つかることも多く、郊外エリアではさらに下がります。
この差が、ニューヨークでの「高単価・少席・高回転」モデルと、ダラスの「中価格帯・多席・長滞在」モデルの違いを生み出しています。
両都市の客層にも明確な違いがあります。
ニューヨークでは、観光客や富裕層を中心に、週1以上で寿司店を訪れるリピーターも多く、平均単価は220〜280ドル。ミシュラン星付きであれば300ドルを超えるのが一般的です。
一方、ダラスでは月1〜2回の利用頻度が主流で、平均単価は130〜180ドル。郊外では100ドルを切る価格帯も出現していますが、まだまだ高級志向が主流であり、回転率よりも接客・体験型が重視されています。
採用市場にも都市間で大きな差があります。
ニューヨークでは人材が飽和しており、競争が激しい反面、労働条件は成熟しています。たとえば、ヘッドシェフであれば年収$90K〜$120K+チップ、ラインシェフでも$65K前後が多く見られます。
一方、ダラスでは人材不足が顕著で、2023年比で求人件数が約1.6倍に増加。NYで経験を積んだ職人が、生活費や待遇のバランスを理由に移住するケースも増えてきました。
📌 参考: BLS Regional Employment Report (2025 Q2)
結論から言えば、「どちらが良い」ということではなく、「どんなビジネスをしたいか」によって選ぶ都市が変わるということです。
- ニューヨークでは、ライトおまかせ+回転重視の業態に可能性があります。Uber Eatsなどとの連携を含めたマルチチャネル型店舗も注目されています。
- ダラスでは、「価格を抑えつつ本格志向」の路線が未開拓領域。たとえば、69ドルの9貫+巻物+小鉢といったコースを展開することで、地元のミドル層・若年層を取り込む余地があります。
📌 [参考: 2025年 KIWAMI 求人動向・出店サポート相談件数の内部データ](非公開)
ダラスとニューヨーク。成熟市場と成長市場。それぞれにチャンスと課題があります。
だからこそ、「今どこで」「誰に向けて」「どんな寿司体験を届けたいか」という問いを持つことが重要です。
私たちKIWAMIでは、両都市における出店支援、人材採用、マーケティング戦略まで一気通貫でサポートしています。気になる方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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